今回はの「思うことは」は随筆ではありません。超短編小説(フィクション)です。

北東アジアの第3次世界小戦―日本またもや原爆被爆

北朝鮮首脳
 我は大したものだ。ミサイル発射や核実験をちょっとやれば世界中が騒ぐ。我がちょっと動けば、一言いえば、世界中の報道機関が騒ぐ。これだけ世界をかき回せる国は他にはないだろう。我はどんなことでもできる。国際社会がどんなに騒ごうと、もしやの場合は超大国の中国がいつでも助けてくれる。
 朝鮮半島歴史の殆どは勢力争いの舞台である。日本が占領していた時が形の上では最も安定していたと思えるのは皮肉なものだ。日本が敗退した時から、ロシアが主導する共産主義と対するアメリカが標榜する自由主義、資本主義とかの争いの道具にされ、1950年から3年間朝鮮戦争が続き、我々の支配圏と韓国の支配圏とに分断された。この戦争で日本経済は随分と潤った。日本は感謝すべきだ。
 朝鮮戦争は終わってないし休戦状態なのだ。韓国は我々の支配圏にある(韓国は逆の主張をする)。我々の国は、周辺国に恩義を感じることは何もない。我こそ恩義を受けるべきである。日本には占領時の損害についての賠償を絶対に放棄しない。
  我が国のミサイル制御と核弾頭の小型化の技術は着々と進んできた。この組合せ技術の完成の程度を本当に世界に示して見せる。

世界の暗黙の常識
 原子爆弾は怖そうだ。その残虐さの実感は被爆経験が2回ある日本人以外には相変わらず分からない。 人間は動物であり、動物には弱肉強食の本能がある。国連なる組織は、この本能を抑える働きをかろうじてやっている。
 どの国もスキがあれば力のシンボルである原子爆弾を持ってみたいと心の底では思っている。北朝鮮制裁には特によい方法がないから朝鮮半島の歴史に関る6ケ国にか任せておけと思っている。北朝鮮の原子爆弾を運べる実用的なミサイル完成が迫っているかもしれなと恐れてもいるが地理的に遠い異国の問題とも思っている。
 それを本当に実験する場所は、どこだろう。北朝鮮内では不可能だし、自分の支配下にある(と北朝鮮が主張する)韓国ではないし、まさか国境を接する核保有超大国の中国でもロシアでもない。世界最大の核保有国アメリカの数千キロ離れた領土などは今の技術では考慮外である。日本は世界有数の防衛力をもっていながら反撃する実行力がない世界でも珍しい国であるし日米安全保障条約は実際の運用上疑問だらけである。

2009年某月某日
 北朝鮮はミサイルを突然に3発発射した。日米のミサイル防衛システムのレーダーは早速捉えたが、どの型のミサイルか、テボドン、ノドンなど混ざっているようだとか、いや少々違うとか色々ヤリトリがあった。迎撃ミサイルを発射すべきなのかどうか、日本は決める方法も手段もなかった。アメリカはなぜか日本側の意思に沿うことを強調した。そのうち太平洋のハワイ方向に向いていると思われるミサイルが突然途中で制御失敗をしたように弾道飛行がおかしくなり、急降下し始めた。
 次に日本の北東領海内でピカーという猛烈な閃光が見えドーンという爆風と音(ピカドン)が起こった。1945年以来、日本は3回目の原子爆弾被爆となった。規模は小さかった。海面がザーと盛り上がり直視できないような閃光が走った。被害にあったのは航行中の数隻の漁船と運搬船であった。死者は?或いは放射線被爆者は何人かすぐには把握できなかった。

世界の対応
  ニュースは世界中を駆け巡った。時間帯によっては臨時ニュースや号外であった。人々は被害程度に余り関心がなかった。半世紀以上実際の経験がない惨事については被害の想像も不可能だった。ただ、北朝鮮という小さな国が、実際に使えるオモチャをもったことを認識した。
  国連安全保障理事会は緊急総会を開き、北朝鮮をどのように罰するか討議が始まっていたが、予想通り過激な処置には中国が猛反対した。
 アメリカでは日米安保に基づいて北朝鮮に反撃の核攻撃をすべきだという意見もあったが、イラク戦争など戦争好きの汚名は繰り返したくなかった。アメリカの巨大産業をつぶした日本への同情者は少なかった。

日本国内
 政府及び与党は被害の実態把握に集中していた。被害の程度を正確に知らないと世界に訴える力も限りがある。どういう被害が起こる兵器なのか日本以外は実感が全くないのだから。核の保有を何が何でもという意見が大勢を占め、法律化に動き出した。しかし、世界で最も平和な憲法を持ち、原爆実被害国として核廃絶を先導した日本が、世界からどう受け止められるのか、反対に日本が国連安全保障理事会のまな板に乗せられる可能性があった。常任理事国の中国の猛反対は目に見えていた。
 ある野党は、日本は軍隊を全て捨てるべきだと夢のようなことを言い出した。そうすれば相手が攻めてくるはずがないというのであった。人間は動物である。弱肉強食の本性があるのに。

北朝鮮首脳
 我々は遂に世界の大国となった。実際に使える核弾頭を持っている事を世界に見せることができた。日本領海内でのピカドンは約2000キロ離れた太平洋の公海で核弾頭を炸裂させるという予定であったミサイルに不都合が起き、予想外に日本領海内に落下したものである。
  少々の遺憾の意を表したいが、第二次世界大戦中の日本による占領支配で受けた損害の賠償の請求を緩めるものではない。

2009年6月




 
Copyright©2007 Takeshi Nakajima