後期高齢者となると健康がらみの思いが増える。60年位前に手遅れ寸前の真珠腫性中耳炎で脳間近の13時間の大手術を受け、以来右耳の鼓膜がなく、左耳が頑張ってきたがくたびれているようだ。五感と写真撮影の感性との関係はどうだろうと考えたりする。
 朝日新聞9月25日付で、障害者アートの人気が上昇中という記事があった。アートの障害者の大家として頭に浮かぶのは、音楽で晩年のベートーベン、世界的ピアニストの辻井伸行氏、絵画で山下清、棟方志功・・・、盲目の写真家の話題もちらほらある。
 五感とは、外界を感知する感覚機能のうち、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚をさし、古代ギリシャのアリストテレスの分類にはじまると言われ、現在では、細かくは20余りあるとも言われる。単純には、写真作品には視覚だけが関与すると考えがちであるが、他の感覚を動員した総合的な感覚の結果であるとも思う。
 理屈では説明しがたい第六感としての、インスピレーション、勘、直感、霊感、「虫の知らせ」「嫌な予感」などは野性的な本能ともいわれるが人は文明化で失いつつあるとのことである。
 写真撮影の感性は五感を通して脳に蓄積された過去の記憶,得体のしれない第六感の組み合わせの作用の結果なのかなと思ったりする。
 五感の一つが崩れると、その分、他の五感の能力が研ぎ澄まされ高度化することもある。何歳まで生きるか知らないが、聴覚が更に劣化したら、見せられる写真作品が増えるのかどうなのかと思いを巡らしている。

2015年9月




 
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